愛らしい仕草で私たちを魅了する猫。喉をゴロゴロ鳴らしたり、尻尾を勢いよく振ったりする姿は、まるで感情表現をしているかのようです。しかし、あのクールな表情からは、真意を読み取るのは難しいものです。
特に、「猫は笑うのか?」という疑問を抱いたことはありませんか? 私たちは、犬のように分かりやすく「ヘラヘラ」と笑う猫を見たことがありません。もしかしたら、私たちには見えない方法で笑っているのかも…?
猫は笑うことができるのか?
私たち人間は、表情筋を使って、笑い顔、怒り顔、悲しみの顔などを表現することができます。一方、猫は、表情筋が非常に少ないので、笑い顔をすることができません。
猫は、野生で生き残るために、感情を顔で表さないように進化したと言われています。猫は、歓びを顔で表現できないかわりに、体を使って私たちに伝えています。
猫の笑顔に見える表情の真実
猫は「笑顔」に見える表情をすることがありますが、実際には人間のように笑うわけではありません。猫の表情は、リラックスしている状態や満足感を示すことが多いです。
例えば、目を細めたり、口を軽く開けたりすることがあります。これは、安心しているサインとも言えます。また、猫がゴロゴロと喉を鳴らすのも、心地よさを感じている証拠です。
猫の「笑顔」に見える表情は、飼い主との信頼関係が築かれている証でもあります。猫の表情を理解することで、より深いコミュニケーションが可能になります。
猫の感情は表情に現れるのか?
猫の「感情」は「表情」に現れるのか、飼い主にとっては興味深いテーマです。猫は犬と違い、感情を直接的に表情に出すことが少ないとされています。
しかし、耳の動きや「ひげ」の向き、目の開き具合など、微妙な変化で感情を示すことがあります。特に、リラックスしているときには目を細めたり、耳を後ろに倒したりすることがあります。
これらのサインを理解することで、猫が「笑うのか」といった疑問に対するヒントを得ることができるでしょう。猫の表情を観察することで、彼らの感情をより深く理解できるかもしれません。
猫の表情とその意味
ここでは、猫の表情とその意味について、「フレーメン反応と猫の笑顔の関係」について、また、表情が豊かな猫として、ロシアンブルーを取り上げています。
フレーメン反応と猫の笑顔の関係
フレーメン反応は、猫が特定の匂いを感じたときに見せる独特な表情で、まるで「笑っている」ように見えることがあります。
この現象は、猫が口を少し開けて鼻をひくつかせる姿勢をとることで、フェロモンなどの化学物質をより詳しく分析するために、ヤコブソン器官を活用しているのです。ヤコブソン器官は、上の前歯の裏にあるため、口を開ける必要があります。
猫が笑うかどうかは議論の余地がありますが、フレーメン反応は「猫の感情表現の一部」として捉えられることが多いです。この現象を理解することで、猫の行動や感情をより深く知る手助けとなるでしょう。
フレーメン反応については、下記に詳しく書いています。
https://ienekoweb.com/flehmen-response/
ロシアンブルーの特徴的な表情
ロシアンブルーは、その「優雅な姿」とともに、表情の豊かさが魅力です。特に「笑うような表情」は、多くの愛猫家を虜にしています。
彼らの「微笑んでいるかのような口元」は、見る人に幸福感をもたらします。さらに、目の「輝き」は、感情を伝える重要な要素です。
ロシアンブルーは、穏やかな性格と相まって、飼い主との「深い絆」を築くことができる猫種です。彼らの表情は、日常の中で「安心感」を与え、心を癒してくれる存在となるでしょう。
猫が感情を伝える方法
猫は「感情」を豊かに表現する生き物であり、特に「笑うのか」といった疑問は多くの飼い主の関心を引きます。猫の感情表現は、しっぽや耳の位置、鳴き声などで判断されます。
猫のゴロゴロ
猫の体をなでていると、ゴロゴロとのどを鳴らすことがあります。猫が最もリラックスして、機嫌がいいときです。
猫自ら飼い主さんのヒザの上などに乗ってゴロゴロ鳴らすのは、甘えているときです。目を細めるので、顔が笑顔になっているように見えますよね。このとき飼い主さんも幸せな気分になります。
ちなみに、ゴロゴロ鳴らしながら、飼い主さんに近寄ってうろうろする動作は、「お腹が減ったのでごはんちょうだい」「遊んで」「この部屋から出たいのでドアを開けて」など、何かを要求しているときです。
ただ、ゴロゴロ鳴らすので、猫の体をなでようとすると、触られるのを嫌がる場合があります。このときは、体調が悪いのかもしれません。
猫は、苦痛をやわらげるため、のどをゴロゴロと鳴らすことがあります。触られるのを嫌がるようなら、獣医師に相談してみてください。
しっぽでわかる猫の感情
猫のしっぽが垂直にピンと立っているときは、幸せであることを表現しています。また、まっすぐに上に向け、先を曲げて飼い主さんに近づいてくるときは、フレンドリーという気持ちを表しています。
さらに、立っている飼い主さんの足に体をこすりつけてきた場合、飼い主さんに甘えたいか、ごはんやおやつなど、何かを要求しているときです。
一方、しっぽを膨らませている場合は、恐れや警戒心を表しています。
猫のしっぽのポーズについては、下記に詳しく書いています。https://ienekoweb.com/cat-tail/
耳でわかる猫の感情
耳がまっすぐ上を向き、少し前を向いているときは、リラックスして幸せで満足している気分を表現しています。ヒゲもピンと張ります。おそらく、飼い主さんだけは、愛猫が笑っていると思えることでしょう。
これに対し、耳がまっすぐ上を向き、より前をむいているときは、何かに集中しているときです。目が一点を見つめていることが多いです。
耳を後ろに倒している時は、不安や怒りを感じている可能性があり、注意が必要です。
猫はいたずらしながら笑ってる?
柱でツメをといだり、カーテンにツメをひっかける。猫がよくやる、飼い主さんからみると、いたずらです。猫の次のような行為はどうでしょう。いたずらをしながらほくそ笑んでいるかもしれませんね。
※動画にはBGMが流れています。38秒。
テーブルなどに置かれている物を下に落とす行為です。落とすだけでなく、落下した後どうなったかを確認しているところが注目されます。
猫が物を下に落とす行為には、次のような理由があると考えられています。
(1)ただ単に遊んでいる。
(2)飼い主さんの注意をひいている。
(3)物が死んでいることを確認している。
(4)猫は物理法則を理解している。
(1)退屈をまぎらわすために、物を落として遊んでいるという見方ができます。
(2)物を落としたときの音で、飼い主さんが飛んでくることを学習したのかもしれません。「おっ、来た来た、おそいぞ!」と内心で笑っているのかもしれません。
(3)猫は、ネズミなどの獲物をつかまえたとき、足で動きをみて、死んでいることを確認します。この行為と同じく、本能的に物を床に落としていると考えられています。猫は、ネズミなどの獲物と置物とは違うことは最初から分かっています。
(4)猫は物が動くと音が鳴り、物が入っている箱をひっくり返すと下に落ちるという重力の仕組みを理解していると考えられています。このことから、テーブルなどから物を下に落とす行為は、重力の仕組みを学習していると思われます。学習の結果、猫は、「はやり、予想したとおりだニャ」とほくそ笑んでいるかもしれませんね。
<参考>
・服部幸『ネコにウケる飼い方』(ワニブックス)
・Saho Takagi, Minori Arahori, Hitomi Chijiiwa, Mana Tsuzuki, Yuya Hataji & Kazuo Fujita「There’s no ball without noise: cats’ prediction of an object from noise.」(『Animal Cognition』volume 19, pages1043~1047 (2016))