「猫にイカはダメ!」と書かれている事が多いのですが、十分加熱されたやわらかい状態のイカなら、猫が食べても問題はありません。
調味料を加えないのが条件で、猫がのどに詰まらせないように、細かく切って与えましょう。1日小さじ1杯(5g)程度が目安です。
猫にとって、イカは消化に悪いので、積極的に与えてもよい食材ではありません。与え過ぎに注意してください。
猫にイカを食べさせるメリットとデメリット
先に書いたように、十分加熱し、細かく切ったイカを少量なら、猫が食べても問題はありません。ここでは、猫にイカを食べさせるメリットとデメリットについて書いています。
メリット
イカには「タウリン」が豊富に含まれています。タウリンには、肝臓・心臓機能の強化、コレステロールの調整、血圧を正常に保つなどといった作用があります。
猫にとってタウリンは、必須アミノ酸ですが、猫はタウリンを自らつくり出すことができませんので、猫はタウリンを食べ物から補給する必要があります。
猫がイカを食べると、タウリンを補給できるというメリットがあります。
ただし、信頼あるキャットフードには、タウリンが必ず添加されていますので、健康な猫にあえてタウリンを追加補給する必要はありません。
ドッグフードにはタウリンが添加されてないので、猫にドッグフードを常食させるのはNGです。
デメリット
肉食動物である猫は、食べ物を引き裂いて丸呑みします。
猫がカリカリを食べるとき、かみ砕いているような音がしていますが、人間のようにかみ砕いて粉々にしているときの音ではなく、引き裂こうとしているときに出ている音です。
イカは、猫にとって引き裂きにくい食材なので、ゆでたイカを細かく刻んで与えないと、喉に詰まらせて窒息する可能性があります。
また、イカが原因で「食物アレルギー」を起こす場合があります。猫が初めてゆでたイカを食べるときは、極少量を与えて様子をみるようにしましょう。
猫にイカがダメな理由
「猫にイカを食べさせてはダメ」というのは、「生」のイカの場合です。この項では、猫に「生」のイカはダメな理由をまとめています。
猫はイカで腰を抜かす
イカには、「チアミナーゼ」という酵素が含まれています。チアミナーゼは、猫の体内のビタミンB1を壊します。
ビタミンB1には、糖質をエネルギーに変えて、疲れにくくする機能があります。また、脳や神経を正常に保つ働きがあります。
猫は、ビタミンB1が欠乏すると、ふらつき、食欲低下、よだれを垂らす、といった症状が現れます。※猫は犬のようによだれを垂らすことはありません。
猫がふらついて歩けなくなっている状態を見て、「猫がイカを食べると腰を抜かす」と言われるようになったとか。
ただし、チアミナーゼは、十分加熱すると活性を失いますので、加熱されたイカを食べることによるビタミンB1欠乏症の心配はありません。
<チアミナーゼを多く含む食材>
・魚介類(イカ、タコ、アワビ、エビ、カニなど)
・貝類(あさり、はまぐり、かきなど)
・山菜(わらび、ぜんまいなど)
・淡水魚(コイ、フナなど)
食中毒
魚など、生のシーフードには細菌が付着しています。少量の細菌は、人間にとって問題がなくても、体の小さな猫にとっては食中毒の原因になります。特に、免疫力が低い老猫や子猫には注意が必要です。
食中毒の症状としては、下痢、おう吐、元気消失、発熱などがあげられます。
食物アレルギー
加熱処理された食材、生の食材にかかわらず、イカが原因で食物アレルギーを起こす可能性があります。
イカに限らず、キャットフード以外の食材を食べさせるときは、極少量を与えて、しばらく様子をみる必要があります。食物アレルギーにかかると、必要以上に体を掻く、噛む、舐めるといった動作をします。
アニサキス
イカや魚などには、「アニサキス」という寄生虫が存在します。アニサキスが、胃や胃壁に寄生すると、数時間で激しい腹痛や吐き気などの症状が現れます。
スーパーや魚屋さんでは、下地処理をしてアニサキスが取り除かれて、あるいは、死滅させてありますが、100%安全だとは言えません。
人間の話ですが、スーパーで買った刺身を食べて、アニサキスによる食中毒を発症したという事例が毎年ニュースになっています。
アニサキスは60℃で1分、70℃以上では瞬時に死滅します。冷凍処理によりアニサキスは感染性を失うので、魚を-20℃以下で24時間以上冷凍することは有効です。
内閣府食品安全委員会
ただ、家庭用冷蔵庫の冷凍室では、-20℃以下を保つのが難しいと言われていますので、アニサキスを死滅させるには、食材を加熱する方が有効です。塩漬けや酢締めをしてもアニサキスは死滅しません。
イカソーメンもダメ?
イカソーメンは生なので、猫に食べさせてはダメです。イカソーメンは猫の消化器官には負担が大きく、消化不良を起こしやすくなります。嘔吐や下痢などの症状が現れる可能性があります。
人間用に味付けされたイカソーメンは、猫にとっては塩分が非常に高濃度です。過剰な塩分は、高血圧や腎臓への負担、さらには心臓病を引き起こす可能性があります。
乾燥したイカソーメンは、猫が飲み込む際に喉や食道に詰まってしまう危険性があります。特に子猫や高齢猫は注意が必要です。
猫がイカを食べてしまったら
猫が「生」のイカを食べてしまったら、次のような症状が出る場合があります。
・食欲不振:フードを食べなくなる
・多量のヨダレ:口から大量のヨダレが出る
・ふらつき:歩くときにふらついたり、うまく歩けなくなる
・後脚の麻痺:重症になると後脚が動かなくなる
・痙攣:全身が痙攣する
これらの症状は、食べた量や経過時間によって現れる時期や程度が異なります。少量であれば症状が出ない場合もあれば、大量に摂取した場合や長期間にわたって摂取した場合には重症化する可能性もあります。
少量であれば、すぐに症状が出ることは少ないです。まずは落ち着いて、猫の様子を注意深く観察しましょう。
加熱したイカであっても、食べ過ぎると下痢や食欲不振といった症状が出る場合があります。
上記のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。獣医師は、猫の状態を診察し、必要な治療を行います。
イカ ちゅーるの原材料
いなばの「CIAO ちゅ~る」は、愛猫にとって定番のおやつですね。ちゅ~るの味は、現在80種類以上あるそうです。
その中に通称「イカ ちゅ~る」があります。正式名は「とりささみ&いか」です。定番の「とりささみ」味にイカを加えた商品です。
「とりささみ&いか」の原材料は以下の通りです。
鶏肉(ささみ)、いか、いかエキス、タンパク加水分解物、糖類(オリゴ糖等)、植物性油脂、増粘剤(加工でん粉)、ミネラル類、増粘多糖類、調味料(アミノ酸等)、ビタミンE、紅麹色素、緑茶エキス
なお、加熱殺菌されていますので、チアミナーゼに関して問題はありません。
原材料を見て「おや?」と思われたかもしれません。「紅麹色素」が使用されていますね。小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」を想起された方もおられると思いますが、あの健康被害は、紅麹色素が原因ではありませんので安心してください。紅麹色素は、国が使用を認めた食品添加物です。
猫がスルメを食べてはダメ?
「スルメ」の食塩相当量は、100gあたり2.3g、「さきいか」は同じく6.9gです。※「日本食品標準成分表 2020年版(八訂)」による
塩分量が多すぎるので、猫に「スルメ(あたりめ)」や「さきいか」を与えるのはNG。また、消化に悪く、胃の中で水分を吸収して膨らむと、腸で詰まる可能性があります。
飼い主さんがおつまみとして食べていた「さきいか」を、猫が良い香りにつられて持って行くことがよくありますので注意しましょう。
超有名なあの猫ちゃんも例外ではないようです。