猫が卵を好む場合、与える際のポイントや注意点を知っておくことは、健康を維持するために欠かせません。卵は栄養価が高く、タンパク質やビタミンが豊富ですが、与え方を間違えると逆効果になることもあります。
本記事では、猫に卵を与える際の効果的な方法や注意すべき点について詳しく解説します。愛猫の健康を考えながら、安心して卵を食べてもらうために、ぜひ参考にしてください。※以降、ここでの卵とは鶏卵のことです。
猫と卵の関係性を理解する
猫と卵の関係性を次の2点について解説しています。
1.猫が卵を好む理由とは?
2.卵の黄身と白身の違い
猫が卵を好む理由とは?
猫が卵を好むかどうかは、個体差が大きいと言えます。卵が好きな猫がいれば、全く興味を示さない猫もいます。これは、猫の好みや性格、過去の食経験などが影響していると考えられます。
猫は肉食動物であるため、動物性タンパク質を好む傾向があります。卵は「高タンパク質」であり、猫の食事にとって理想的な栄養源です。卵を好む猫は、タンパク質の補給源として卵を食べていると思われます。
また、卵を好む猫は、タンパク質や脂質の匂いに食欲をそそられ、あるいは、卵の柔らかい食感は食べやすいと感じているのかもしれません。
卵の黄身と白身の違い
卵は「猫」にとっても魅力的な食材ですが、その中でも「黄身」と「白身」には異なる特徴があります。
黄身は脂肪分が多く、ビタミンAや鉄分が豊富で、猫の健康に良い栄養素を含んでいます。
一方、白身は低カロリーでタンパク質が主成分です。しかし、猫に生の白身を与えるとビタミンBの吸収を妨げるアビジンが含まれているため、注意が必要です。猫に卵を与える際は、加熱して白身のアビジンを無効化することが推奨されます。
猫に卵を与えるメリットとデメリット
猫に「卵」を与えることには、いくつかのメリットとデメリットがあります。メリットとデメリットに分けてみていきましょう。卵によるアレルギー反応や卵のコレステロールについても説明しています。
メリット
卵は高タンパク質でビタミンB群やビオチン、セレンが豊富であり、猫の健康維持に役立ちます。また、毛並みを美しく保つ効果が期待できます。
・高タンパク質:卵は、猫に必要なタンパク質が豊富です。筋肉の維持や成長に貢献します。
・必須アミノ酸:猫が体内で合成できない必須アミノ酸も含まれており、健康な体作りをサポートします。
・ビタミンとミネラル:ビタミンAやD、鉄分など、様々なビタミンやミネラルがバランス良く含まれています。
デメリット
卵白にはアビジンという成分が含まれており、ビオチンの吸収を妨げる可能性があります。また、生卵にはサルモネラ菌が存在するリスクがあり、加熱して与えることが推奨されます。適量を守りつつ、安全に配慮することで、猫の健康をサポートできるでしょう。
・生卵のリスク:生卵にはサルモネラ菌などの病原菌が含まれている可能性があり、食中毒を起こす恐れがあります。必ず加熱して与えましょう。
・アレルギー:すべての猫が卵を食べられるわけではありません。アレルギー反応が出る可能性も考慮しましょう。
・肥満のリスク:卵は高カロリーなので、与えすぎると肥満の原因になります。
・栄養バランスの偏り:卵だけでは猫に必要な栄養素を全て補うことはできません。主食はキャットフードとし、卵はあくまで補助食として与えましょう。
アレルギー反応
猫が卵を食べると、まれに食物アレルギーを起こします。始めて卵を与えるときは、極少量にして様子をみましょう。※卵を食べなれている猫でも、突然、アレルギー反応を起こす場合もあります。
アレルギーの症状には、次のようなものがあります。
・くしゃみ、せき
・ひっかき傷が増える
・自分の足をかむ
・嘔吐
・下痢
・鼻水
・喉の炎症によるいびき
これらの症状や他の異常がみられたら、獣医師に相談しましょう。
コレステロール
卵は、全ての食材の中で、コレステロール含有量が1位です。最近の研究では、体内のコレステロール値を一定に保つシステムが備わっており、卵を摂取しても血中のコレステロール値に影響がないと言われています。ただし、脂質異常症の場合は、悪化予防のため、コレステロールの摂取量を控えることが望ましいとされています。
上記のコレステロールの話は人間の場合であって、猫の場合は不明なことが多いので、コレステロールの過剰摂取は控えた方がよいと思われます。
猫に生卵を与えてはいけない理由-海外と日本の違い
猫に生卵を与えてはダメな理由として、海外では「サルモネラ菌」というキーワードが、日本では「アビジン」というキーワードが使われています。
海外と日本の違いについてみていきましょう。
海外では「サルモネラ菌」が問題
海外のサイトを調べると、「猫には生卵を与えてはいけない」と書かれています。その理由は、サルモネラ菌による食中毒を起こす可能性があるからです。
サルモネラ菌を強調する理由は、多くの国では、卵を加熱して食べるからです。卵を加熱して食べることを前提としているので、賞味期限も1ヵ月以上と長く設定されています。
一方、日本では、卵を生でも食べることを前提に売られていますので、賞味期限を2週間程度内に設定されています。日本では、生産段階から徹底的に衛生管理がなされていますので、サルモネラ菌に感染する確率は極めて低いです。
しかし、サルモネラ菌による食中毒のリスクは全くゼロではないので、猫には加熱した卵を与えましょう。サルモネラ菌は、75℃以上、1分以上の加熱で死滅します。
日本では「アビジン」が問題
日本では、卵には「アビジン」という物質が含まれているので、生卵を猫に与えてはダメと書かれていることが多いです。
アビジンは卵白に含まれる成分で、卵黄に含まれている「ビオチン」という成分と腸内で結合し、ビオチンの吸収を阻害します。
ビオチンは、ビタミンB群に属する水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB7やビタミンHとも呼ばれています。ビオチンは、皮膚や粘膜、毛を健康な状態に保つ働きをします。
よって、生卵を食べ続けると、ビオチン欠乏症になり、皮膚炎、脱毛、食欲不振、筋肉痛といった症状が発生する可能性があります。
ただし、加熱することでアビジンの機能は失われます。一方、ビオチンは加熱しても変わりません。以上のことから、猫には、加熱した卵をあげるようにしましょう。
※殻付きのまま保存したゆで卵を与えるのは、食中毒の原因になるので避けましょう。
猫に卵を与える量
ペット先進国の欧米では、猫に「おやつ」を与える量は、「猫の1日のカロリー摂取量の10%」、あるいは「10%以下」や「5%~10%」としています。この量は卵にもあてはまります。
ライフステージ(子猫、成猫、シニア、避妊・去勢、妊娠中など)によって異なりますが、一般的な猫の1日のカロリーは、次の計算式で求められます。※他の計算式もありますが、下記の計算式がよく使われています。
「体重(kg)×30+70=1日のカロリー」
体重4kgの猫なら、「4×30+70=190kcal/1日」になります。
190カロリーの10%は、19カロリーです。
例えば、ゆで卵の可食部100gのカロリーは、134カロリーなので、「134÷19=約7」となり、このことから猫(体重4kg)に与える卵の量は約14g(100÷7=約14g)になります。猫の体重1kgに対して、ゆで卵の量は3.5gです。
ゆで卵の14gは、スライス1枚分です(上の写真参照)。
猫と卵に関するまとめ
猫が卵を食べても問題はありませんが、加熱調理したものを与えましょう。与える1日の量は、ゆで卵なら、健康な成猫でスライス1枚分です。ただし、初めて与える場合は、極少量を与えて様子をみましょう。
スクランブルエッグや卵焼き、目玉焼きなどを与える場合は、調味料を加えてはいけません。また、油を使わずに調理してください。卵を与えたら、その日はおやつを控えるようにしましょう。
<参考>
・日本食品標準成分表 2020年版(八訂)文部科学省
・カロリーSlism https://calorie.slism.jp/