猫を飼っている方なら、愛猫に特別なおやつをあげたいと思うことがあるでしょう。エビは多くの人間にとって美味しい食材ですが、猫にとっても安全なのでしょうか。
ネットや本で調べると、日本では、「猫がエビを食べてはいけない」と書かれていることが多いです。ただ、それは「生」のエビであって、愛猫に茹でたエビをあげても大丈夫です。
ただし、茹でたエビであっても、注意点があります。この記事では、エビの安全な与え方と注意点をまとめています。
猫が「エビの生」を食べてはいけない理由
まず、猫が「エビの生」を食べてはいけない理由について解説します。猫が「エビの生」を食べてはいけない理由として、次のようなことがあげられています。
1.チアミナーゼによるビタミンB1不足
2.消化に悪い
3.えびアレルギー
チアミナーゼによるビタミンB1不足
生のエビには、「チアミナーゼ」という酵素が含まれています。チアミナーゼは、ビタミンB1(チアミン)を分解(破壊)する酵素です。
ビタミンB1は、糖をエネルギーに変えたり、筋肉や神経の働きを正常に保つ働きをします。ビタミンB1は、猫にとって重要な栄養素で、大量のビタミンを体内に蓄えられない猫は、犬の5倍のビタミンB1が必要であると言われています。
猫がビタミンB1欠乏症になると、ふらつき、後脚の麻痺といった神経症状が現れます。重症になると死亡することもあります。
ただし、チアミナーゼは熱に弱く、加熱することでビタミンB1を分解する働きが失われます。
ドライフード(カリカリ)が古くなると、ビタミンB1が失われます。また、ドライフードを袋から保存容器に移し替えている方も多いと思いますが、密閉性が弱いと酸化作用によりビタミンB1が失わるので注意しましょう。
消化に悪い
エビを茹でても、もともと消化に悪い食べ物なので、消化不良を起こし、おう吐や下痢といった症状がでる場合があります。
えびアレルギー
アレルギー症例数が多い、あるいは、アレルギー重篤度が高い「えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生」の7品目は、「特定原材料」とされ、これが含まれている食品には、その旨の表示が食品衛生法により義務づけられています。
これは人間の場合ですが、猫もえびアレルギーを起こす可能性はあります。初めて与える際は少量から始めることが重要です。
猫の食物アレルギーの症状としては、次のようなものがあります。
・抜け毛
・おう吐や下痢
・耳の感染症
・手足や顔の腫れ
・足の炎症
・じんましん
・発疹
など
猫に茹でたエビを与えることの基本
ここでは、猫に茹でたエビを与えることの基本について、次のようなことを書いています。
1.茹でたエビを食べても良い理由
2.エビの殻・しっぽを食べても大丈夫?
3.腎臓に問題がある場合は与えない
4.猫に適したエビの調理方法
5.与える量と頻度のガイドライン
茹でたエビを食べても良い理由
海外(英語圏)の場合、エビは、「低カロリーで高タンパク」な食材なので、猫におやつとして与えるのに最適であると紹介されていることが多いです。
エビには高品質なタンパク質が含まれており、猫の筋肉の発達や維持に役立ちます。また、エビは低カロリーであるため、肥満が心配な猫にも適しています。さらに、エビに含まれるタウリンは、猫の心臓や視覚の健康をサポートします。
エビには、カルシウム、鉄、亜鉛、セレン、ヨウ素などのミネラル類やビタミンB1・B2・B6・B12などのビタミン類が豊富に含まれています。
エビの殻・しっぽを食べても大丈夫?
エビの殻、頭、尻尾には、豊富なカルシウムやアスタキサンチン、キチンなどの、健康効果が期待できる栄養素が含まれています。
猫が、茹でたエビの殻、頭、尻尾を食べても問題はありませんが、猫によってはうまく消化できず、胃や腸に詰まる可能性があるので注意が必要です。
猫に茹でたエビの殻、頭、尻尾を与えるなら、粉末にして、いつものキャットフードに振りかけると、エビの匂いが食欲を刺激するでしょう。だだし、あまりにも細かくパウダー状にしてしまうと、猫がむせる可能性があるので注意してください。
腎臓に問題がある場合は与えない
エビにはプリン体が多く含まれています。通常、プリン体は体内で尿酸に代謝され、尿酸は尿中に排泄されます。
尿酸は尿中に溶けにくい物質であり、尿酸値が高い状態が続くと、尿中に尿酸結石が形成されることがあります。尿酸結石は腎臓内に詰まり、腎機能の低下や激しい痛みを引き起こす可能性があります。
また、尿酸結石だけでなく、慢性的な高尿酸血症は、腎臓への負担を増やし、腎機能の低下を促進する可能性があります。
よって、腎臓に問題がある猫には、たとえ茹でたエビでも与えないようにしましょう。健康な猫でも、エビを過剰摂取させると、将来、腎臓に問題が起こる可能性が高くなります。
猫に適したエビの調理方法
まず、新鮮なエビを選び、殻を剥いてください。頭と尻尾、背わたも取ります。
次に、沸騰したお湯でエビを茹でます。茹で時間は3分程度が目安で、それ以上茹でると栄養分が失われることがあります。
茹で上がったエビは冷水で冷やし、適切な大きさにカットしてから与えます。味付けは一切せず、自然のままが猫にとって最適です。エビは高タンパク質で栄養豊富ですが、与えすぎは避け、適量を心がけましょう。
エビの「背わた」は、人間の胃や腸にあたる部分です。スーパーで最も流通しているのは、養殖のバナメイえびです。
養殖エビの場合、直前までエサを食べていますので、背わたは内容物で黒っぽくなっています。内容物には、砂などの異物も含まれています。※出荷前に絶食させて背わたに内容物が残らないようにしている場合もあります。
背わたを取り除くことで、ジャリジャリという食感や臭みがなくなります。
与える量と頻度のガイドライン
猫に「茹でたエビ」を与える際は、適切な量と頻度を守ることが重要です。一般的なガイドラインとして、週に1~2回程度、少量をおやつとして与えるのが良いでしょう。
茹で上がったエビを冷ました後、細かく刻み、猫の食べやすい大きさにします。
日本で最も流通している「バナメイえび(生)」を例にすると、100gあたりのカロリーは82kcalです。※「日本食品標準成分表 2020年版(八訂)」による
主食以外のおやつなどの摂取量は、1日の摂取カロリーの10%が基本です。また、10%追加したら、主食から10%の量を引きます。
下の表を参考にしてください(1日の摂取カロリーの計算式は複数あります)。
1日の摂取カロリーからみたエビの適量 | ||
体重(kg) | 1日の摂取カロリー | 適量(g) |
3 | 160 | 19.5 |
3.5 | 175 | 21.3 |
4 | 190 | 23.2 |
4.5 | 205 | 25.0 |
5 | 220 | 26.8 |
5.5 | 235 | 28.7 |
6 | 250 | 30.5 |
計算上は上の表のようになりますが、殻、頭、尾、背わたを取り除いたエビを加熱し、細かく切って、小さじ1杯程度を推奨します。
まとめ
猫に「エビの生」を与えるのはダメですが、「茹でたエビ」なら与えても問題はありません。エビの殻、頭、尻尾、背わたは取り除いてから茹でましょう。
エビの殻、頭、尻尾にも栄養があるので、与えても良いのですが、パウダー状にならないように気をつけて、粉末にしましょう。粉末にしたものをいつものキャットフードに振りかけてると、食欲を刺激します。
エビには、プリン体がやや多く含まれていますので、与え過ぎると結石の原因になります。腎臓に問題がある猫には与えてはいけません。
猫が初めてエビを食べるときは、ほんの少しだけ与えて、食物アレルギーの症状がないか様子をみましょう。
エビ えび 海老