犬が人間と暮らす内に雑食化し「半肉食動物」になったのに対して、未だに猫は「完全肉食動物」です。なので、猫はイチゴが好きでも嫌いでもありません。
しかし、「うちの猫はイチゴが大好きなの」と言われる飼い主さんがおられるかもしれません。
イチゴが大好きな猫は、おそらくイチゴの青臭いニオイ(あるいは甘くて心地よいニオイ)に反応して食べているのだと思います。または、飼い主さんがおいしそうにイチゴを食べているのを見て、興味本位で口にしている可能性があります。
猫は甘味受容体がないので、甘みを感じることができません。肉食動物にとって、獲物の肉に甘みがあってもなかっても関係がないため、進化の途中で甘味受容体の遺伝子が壊れてしまったと考えられています。
食べさせるならどのくらいが適量?
欧米では、おやつなど主食以外の食べ物は、1日のカロリーの10%を推奨しています。
一般的な猫の1日のカロリーの計算式にあてはめると、体重4kgの猫なら1日のカロリー量は190カロリーです。
<一般的な計算式>「体重(kg)×30+70=1日のカロリー」
190カロリーの10%は、19カロリーです。
イチゴ100gあたりのカロリーは31カロリーなので、体重4kgの猫の場合、約61gが適量になります(19×100÷31=約61g)。
1日のカロリーを基準にすると、体重4kgの猫にとっては結構な量ですね。
参考として、雑誌『ねこのきもち』の別冊には、次のように書かれています。体重4kgの猫の場合、「与えるなら1粒の半分」(『猫に与えてOK?NG?食べ物図鑑』ベネッセ)。
【結論】適量は?
猫にイチゴを与えるなら、(普通サイズのイチゴ)半分ないしは1個。
カロリーの計算上、猫にとっては、たくさん食べることができるのですが、イチゴをたくさん食べると、食物繊維の摂りすぎにより下痢を起こす可能性があります。
【与え方】猫がイチゴの葉っぱを食べてもいいの?
イチゴをスライスまたは細かくカットして与えましょう。小さなイチゴでも、丸呑みすると喉につまらせる危険があるので注意が必要です。
イチゴの葉っぱとヘタは消化されないので必ず取りましょう。もちろん練乳をかけるのはNGです。
イチゴの葉っぱに猫にとって有害な毒性があるわけではありません。葉っぱには食物繊維が含まれており、消化を助ける働きがありますので、少量であれば問題ない可能性が高いと言えます。
しかし、量をたくさん食べると、消化不良を起こす可能性があります。また、家庭菜園などで育てたものでない限り、市販のイチゴには農薬が付着している可能性があります。農薬は猫にとって有害な場合があるため、与える際はよく洗い、葉っぱは取り除いてから与えることをおすすめします。
葉っぱを気管に詰まる可能性も考えられますので、特に子猫や高齢猫など、小さな猫や体の弱い猫には葉っぱを与えない方が安全です。
猫にイチゴを何歳から与えてもいいの?
子猫や老猫にイチゴを与えることは、一般的に避けるべきです。
子猫や老猫は、消化器官が未発達または機能が低下しているため、イチゴを与えることは避け、猫用の総合栄養食を主食として与えるようにしましょう。
もし、どうしてもおやつとして与えたい場合は、獣医師に相談し、少量を様子を見ながら与えるようにしてください。
子猫の場合
消化器官の発達: 子猫の消化器官はまだ未発達で、人間の食べ物に含まれる糖分や食物繊維を十分に消化できない可能性があります。
小さい子猫は、イチゴの種やヘタを誤って飲み込んでしまうと、気道を詰まらせてしまう危険性があります。
子猫:生後6ヶ月まで、あるいは、1歳半頃まで
老猫の場合
老猫は、若い猫に比べて消化機能が低下しているため、イチゴの糖分や食物繊維を消化しきれず、下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。
イチゴにはカリウムが多く含まれており、腎臓に負担をかける可能性があります。腎臓に疾患がある老猫には特に注意が必要です。
老猫:一般的に、7歳頃からシニア期に入り、15歳以上が老齢期と呼ばれます。
猫がイチゴを食べて得られるメリット
猫がイチゴを食べて得られるメリットは、食物繊維が腸内を掃除してくれる程度です。
イチゴは低カロリーで、ビタミンなどの栄養素が豊富に含まれています。これらは人間にとっては利点ですが、猫にとっては別の話です。
イチゴの「ビタミンC」が強調されますが、人間とは違い、猫はビタミンCを自分で生成できるので、飼い主さんが猫にあえてビタミンCを補給させる必要はありません。
※ただし、子猫、老猫、妊娠中(授乳中)の猫は、食べ物から補給する必要があります。
猫がイチゴを食べたときのデメリット
イチゴは、低カロリーで低糖質な果物ですが、猫がイチゴを毎日のように食べたり、一度に大量に食べると、体に悪影響を及ぼします。
<摂りすぎによる体への悪影響>
(1)先にも書きましたように、食物繊維の摂りすぎると、下痢を起こします。
(2)イチゴは低糖質とはいえ、猫は高血糖になりやすく、特に糖尿病や肥満をかかえている猫にはよくありません。
(3)高血糖とストレスが重なると、興奮状態(シュガーラッシュ)になる可能性あります。
(4)少量でも食物アレルギーを起こす可能性があります。
なお、イチゴには、甘みの元であるキシリトールが微量含まれています。猫にとってキシリトールが毒になるかは結論が出ていません。今のところ、常食しないかぎり問題はないようです。