お味噌汁などの「だし」をとるのに、煮干し(かたくちいわし)を使うことがあります。皆さんは、「だし」を取ったあとの「だしがら」をどうしていますか?
つい、猫にあげたくなりませんか?
猫はよろこんで食べますが、ふと食べさせてよかったのだろうかと疑問になりました。そこで、猫が煮干しの「だしがら」を食べてよいのかについて調べてみました。
猫に「だしがら」を与えると結石の原因に
まず、「煮干し」「煮干しのだし」「だしがら」に含まれる水分とミネラル類、食塩相当量を下のみてみましょう。下の表は、それぞれ100g中に含まれる量です。
水 分 |
ミネラル類 | 食 塩 相 当 量 |
|||||||
ナ ト リ ウ ム |
カ リ ウ ム |
カ ル シ ウ ム |
マ グ ネ シ ウ ム |
リ ン |
鉄 | 亜 鉛 |
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煮干し | 15.7g | 1700mg | 1200mg | 2200mg | 230mg | 1500mg | 18mg | 7.2mg | 4.3g |
煮干しのだし | 99.7g | 38mg | 25mg | 3mg | 2mg | 7mg | 微量 | 微量 | 0.1g |
だしがら | 84g | 1662mg | 1175mg | 2197mg | 228mg | 1493mg | ほぼ 18mg |
ほぼ 7.2mg |
4.2g |
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂) |
まず、「煮干しの成分量」と「だしがらの成分量」に注目してください。「煮干し」から「だし」を取っても、ミネラル類は「だしがら」に多く残っているのが上の表でわかります。
ミネラル類は、猫の体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
ナトリウムは猫の腎臓に負担をかける
「ナトリウム=食塩」ではありませんが、ナトリウムの量をみるだけでも、塩分量の目安になります。塩分相当量は、ナトリウム(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)という式で計算します。
煮干しから「だし」をとっても、ナトリウムの量は変わらないことが、上の表でわかります。また、「塩分相当量」を見てもそれがわかります。つまり、「だしがら」の塩分量は、「煮干し」の塩分量とほぼ同じであるということです。
ナトリウムは、猫の健康維持にとって、大切な成分です。通常は、総合栄養食のキャットフードや猫用おやつで、猫に必要な塩分は補充できます。健康な猫なら、塩分を過剰摂取しても体外に排出します。
しかし、健康な猫でも、塩分を過剰摂取しつづけると、腎臓に負担がかかり、腎臓病や尿路結石のリスクが高まります。また、動脈硬化や心筋梗塞などにかかるリスクを高めます。
腎臓病や結石症の猫、シニア猫にとって、人間用の煮干しはもちろん、「だしがら」はNGです。
結石の元となる成分
結石の元となる成分は、シュウ酸、マグネシウム、リン、尿酸、シスチン酸などの物質です。
煮干し、だしがらには、マグネシウムとリンが多く含まれているので、食べ過ぎると結石の原因になります。
猫がトイレに頻繁に行くけどほとんど排尿しない、排尿の姿勢をしてから排尿までに時間がかかる、排尿時に鳴く、尿に血が混ざっているなどの症状がでたら、結石を疑いましょう。
「煮干し」と「猫用煮干し」の違い
人間用の「煮干し」は、カタクチイワシを海水で煮て、または、塩漬けにしたものを煮て乾燥させたものです。よって、他のだし類より塩分含有量が多くなっています。
一方、塩分を極力取り除いてあるのが、「猫用煮干し」です。カタクチイワシを真水で煮て乾燥させると、減塩の煮干しができます。
人間用「煮干し」から塩分を抜くには、煮干しをたっぷりの水に浸け、数時間おきに水を交換します。水温が高いほど塩分が抜けやすいですが、栄養素も流れ出てしまう可能性があります。数回繰り返すことで、塩分を減らすことができます。
または、煮干しを鍋に入れ、たっぷりの水で数分煮ます。煮汁を捨て、新しい水に替えて再度煮ることを繰り返すことで、塩分を減らすことができます。水につけるよりも短時間で塩分を落とせますが、旨味成分がなくなってしまいます。
まとめ【結論】
・泌尿器系の病気にかかったことのある猫に、煮干し、「だしから」を与えては絶対にダメ!
・煮干しそのものは、食べさせてはダメです。結石の元となるマグネシウムとリン、腎臓に負担をかける塩分が多すぎます。また、硬いので歯を痛めたり、のどにささる危険があります。
・「だしがら」は、だしを取った後でもマグネシウムとリン、塩分の量があまり減らないので、できれば与えない方がよいです。
猫が欲しがるなら、「だしがら」をほんの少しあげて、後は猫用のおやつでがまんさせましょう。
ちなみに、『猫に与えてOK?NG?食べ物図鑑』(ねこのきもち ベネッセ)には、「(煮干しを与えるなら)週1回、3cm程度を2本まで※水やお湯で塩抜きを」と書かれています。